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はやぶさ2に祈りを乗せて

  • 高橋 裕子
  • 2014年12月14日
  • 読了時間: 4分

もう10日ほど前になりますか、無事飛び立ったようでまずはおめでとうございました。

あれからノーベル賞授賞式やら昨日の選挙やらで、もうこの話題は吹き飛んだ気もしますが…(苦笑)

発射前後の世間のフィーバーぶりに、軽く引いたまま戻ってこられない自分がいました。

水を差すようで申し訳ないけれど、いったいこの温度差はどういうことかと考察してみたわけです。

だって人も乗っていない、遠隔制御の探査機ですよね? 結局はラジコンカーとか模型飛行機の延長、みずからの意志を持たない無機質の機械、つまりはロボットですよね? 

はやぶさ初号機のときは、自分が多忙をきわめていたせいかまったく興味がわかず、感動の物語がいくつ映画化されても冷ややかでした。あれほど擬人化したかのように感情移入する気持ちがわかりませんでした。

でも考えたら男の子はたいていメカ好きで(偏見 sorry 女の子もいますね)、それが自分の制御でけなげに走って障害物を乗り越えて帰ってくると「よしよし愛い奴め」という気分になるらしい。ガンダム系の人気も根っこは同じでしょう。それが最新技術で遥か遠く未知の宇宙を旅するとなれば、目をキラキラさせたくもなると。ロマンだと。そう考えれば、なるほど…と思いましたが。

はやぶさ2の出発直前ニュース番組で、聞き捨てならない単語を耳にしました。

「金属製の弾丸を撃ち込んで」はあ??何を?どこに?

小惑星表面の固い部分を砕いて、その内部にある成分を採取し分析するために、爆発物を撃ち込んで人工のクレーターを作る…誇らしげに語られる新しい手法に愕然としました。ずいぶん乱暴なやり方だと思いませんか? 大げさにいえば初対面の相手をいきなり殴るようなものですよ。敵意はなくても、小惑星にとっては遠くから突然やってきた飛行物体に攻撃された感じ。

かりにも一個の星です。惑星です。内部に水と有機物があると考えられるからこそ、「水の故郷」「生命の起源」を探るうえで重要な役割を果たすだろうと、JAXAの方も少年のように嬉しそうに語っておられました。地球をガイアと呼び、ひとつの大きな生命体ととらえるなら、ほかの天体もそれぞれ一個の存在として敬意を表するセンスはないのでしょうか? たとえヒューマノイドのエイリアンがいなくても、小惑星は探査機よりはよっぽど歴史と個性と尊厳をもつ”存在”です。

たとえば未知の大陸を探検していた科学者が先住民を発見し、運動能力がすごいからその理由を探ろうといきなり筋肉にメスを突き立てたとしたら、野蛮だ残酷だと非難されますよね。宇宙なんて、まだまだわからないことばかり。もっと謙虚な姿勢であたれないかな~と思うのです。大いなる宇宙の知性/意志が、弾丸などという攻撃のジェスチャーを喜ぶはずがないでしょうに。

Then again,(=でも考えてみれば)人間はずっとそんなことをしてきましたね。動植物の生命の仕組みを調べるために、躊躇なく採取し解剖し、実験用の個体まで生み出してきたのがわれわれの科学でした…驚くことではないのかもしれません。

それでも昔の人類は、もっと違う姿勢を持っていました。たとえばネイティブアメリカンのシャーマンは、作物につくアブラムシ(頭文字Gじゃなく、小ちゃいやつ!)にさえ「どいてくれますか」と断ってから収穫したそうです。昔のヨーロッパの大工さんたちは、樹木を切り倒すとき宿る精霊に祈りを捧げて許可を求め、他所に移ってもらってから斧を入れたそうです。そして無駄なく大切にすみずみまで活用した。漁師がクジラを、狩人が鹿やイノシシを獲るときも、海山の神に祈り、「あなたの命をください」と挨拶し感謝をささげて食物にさせてもらう、そういう共存の形もありました。地球と人類の誇るべき美しい伝統を、こんなときに生かせばいいのに。

すでに地球上は争いが絶えなくて、現に宇宙開発競争も起きているわけで、醜い不和のエネルギーをアウタースペースに発散すれば、蒔いた種と同じものがどこかから戻ってくるかもしれません。支配と征服と実利ばかりを目的に宇宙を食い散らすことがないように、わたしたちは丁寧な一歩ずつを進めていくべきです。

せめて3年後、弾丸を撃ち込む前に関係者一同で黙祷しませんか。

日本中のはやぶさファンも心を合わせて、テレパシーで小惑星に挨拶し、許可を願うために。「ちょっと手荒なやり方ですみません。人類の進化のためにあなたの一部を採らせてください」と。

そうすれば、宇宙はすこしでも優しい場所になるのではないでしょうか。


 
 
 

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