SHOOTING!
シューティング=射撃ではなく、撮影の話。
良い機会なのでプロフィール写真の裏話をかねて。
メイクも専門の方に丁寧にしてもらい、プロのカメラマンの前で
ポーズをとるというあまりにも新鮮な体験を、ルポ風に。
******
…相対した状態からすこし斜めに向く。45度くらい。
そして上半身だけ逆にねじってカメラマンのほうを向く。
彼に近いほうの肩を下げる。「もう少し!」さらに下げる。
そうすると肩を丸めそうになるのをこらえて、胸を張る。
アゴを引く。そしてにっこり。「もっと!」
不自然なポーズをとっている自分が可愛い子ぶっているようで、
おかしくて笑ってしまう。「そうそう、上手上手」「いいよいいよ!」
声をかけてくるカメラマンが、ドラマに出てくるファッション撮影の
それを思わせて、またおかしくなる。
この気持ちを利用するしかない。本気で笑わないと、自然な笑顔なんて作れない。
本気で笑うと胸をすぼめがちになるので、また「胸張って!」の声が飛ぶ。
にっこり。歯を見せて。ああおかしい。
言われるままにいろんなポーズを取って、角度を変え表情を変え、
ひたすら笑わされて顔の筋肉がどうにかなったかと思うころ
ようやく撮影が終わる。なんだか浮かされたようにハイになった。
『ほんっとにおかしい、もう、まったく…』という感じで笑うと
ちょうどいいらしい。
(知らなかった…だから通常モードでは写真うつりが悪いのか。
いつも目をつぶってしまうことを気にしすぎていたけれど、
それもこんなに大量にとれば、どれかはちゃんと開いてるのだ!)
そのあと2百数枚という写真をパソコンの画面に出して、選別作業に入る。
参加しないつもりだったけれど、やはり本人が好きだと思う写真がいいのだと
言われて、一緒に見る。かなり恥ずかしい。
さすがにたくさん撮っているだけあって、目を見張っていたり、
視線がよそに向いていたり、まぶたが閉じ気味だったり、
無防備な瞬間も含まれている。
自分の写真をあんなにたくさん見たのは初めてで、夢に見そう。
関係者もあんなに見せられたらうんざりするよね~と思って、
みなさんに申し訳ない気もした。
でもメイクのあたりから含めて、最終的に1枚に絞り込むまで、
やはりあれもひとつの共同作業だった。
あれを繰り返すと、写真集とかになるのだなあ、と想像した。
芸能人の方々もたいへんだなあ、と同情する気持ちもちょっと。
それ以来、CMなどを見ていてもたびたび思い出す。
この女優さんのこの表情、わたしだったらできるだろうか、とか。
注文通りの顔を作り、雰囲気と仕草を作り、というのは簡単にできることではない。
ふだんの自分のキャラクターと離れていればなおのこと。
でもたぶん、存在しないものをひねり出すことはできないので、
自分の中にこんなコケティッシュな部分があったか、こんな色っぽい部分があったか、
というのを引き出してみせる作業なのだろう。それが想像できた。
ほんの数秒、数分でも、自分でさえ知らなかった自分をえぐり出して見せる。
平然として。
…まあ、考えてみれば俳優・女優として演技するのはまさにその延長なのだろう。
ちゃらちゃらとした軽い世界というイメージを抱きがちだが(失礼)、
意外にそうでもなさそうだ、と認識させられた出来事。